発達障害児の登園渋り・登園拒否はなぜ起こる?
登園渋り・登園拒否への保護者の対応
発達障害の有無にかかわらず、保育園や幼稚園に行きたくないと泣いたり、かんしゃくを起こしたりするお子さんは少なくありません。ただ、発達障害のあるお子さんの場合は、登園渋りや登園拒否の原因に発達障害の特性による「苦手」が関係している可能性があります。
無理に通園させようとすると、お子さんが大きなストレスを抱えてしまったり、拒否反応がさらに大きくなったり、と状況が悪化しかねません。発達障害のあるお子さんの登園渋りや登園拒否には、どのように対応したらいいのかについて解説します。
行きたくない理由に寄りそう
朝の忙しい時間にお子さんが保育園や幼稚園に行きたくないと泣き出したり、登園の準備を拒否したりして、つい感情的になって叱ってしまったことのある保護者様もいるはず。お子さんの登園渋りや登園拒否に困っている保護者様も少なくないと思いますが、発達障害による特性が行きたくない原因の場合、お子さんも同じように困っていたり、苦しんでいたりします。
特に小さいお子さんだと自分の気持ちをうまく言葉にできないので、感情的に泣いたり拒否したりすることで保護者様に自分の苦しさを伝えようとしているのです。登園渋りや拒否はお子さんからのSOSだと考え、お子さんの行きたくない理由に寄り添ってあげましょう。
まずはお子さんの話してくれる言葉に共感しながら、保育園や幼稚園に行きたくない原因を探ります。お子さんがうまく言葉で伝えられないようであれば、「うん」や「ううん、ちがう」といったYES・NOで答えられるような問いかけをしましょう。ただ、このときに保護者様の考えを押しつけて、無理に答えを誘導しないように注意が必要です。
いろいろな可能性を考えながら、さまざまな角度から行きたくない理由を聞いてみましょう。
園の先生に話を聞く
お子さんが行きたくない理由や事情を話すのが難しい場合は、園の先生に話を聞いてみましょう。お子さんの特性によっては、実際の出来事とお子さんの認識にズレが生じていることもあるので、先生に園での出来事について話を聞き、事実確認をすることも大切です。
発達障害のあるお子さんの登園渋り・登園拒否の原因
発達障害のあるお子さんが登園渋り・登園拒否をする原因としては、親のいない環境に強い不安を感じる「分離不安」によるもの、慣れない環境に対する不安、特性による苦手で困りごとを抱えている、などが考えられます。ただ、お子さんの特性によっては他に原因があることも考えられるため、お子さんに寄り添って話を聞いたり、様子を観察したりしながら登園渋りや拒否の原因を探っていきましょう。
登園渋り・登園拒否の支援方法
親子のスキンシップ・会話を増やす
スキンシップは保護者様からの信頼と愛情をお子さんにダイレクトに伝えられ、お子さんの心の安定や健康につながります。
特に朝よくぐずるお子さんの場合は、夜寝る前にスキンシップをたくさんとるのがおすすめです。抱っこやぎゅーっとしたハグ、手をつなぐ、お風呂に一緒に入る、手遊び、膝にのせて絵本の読み聞かせなどの穏やかなスキンシップを行うのが良いでしょう。お子さんの寝起きが悪い理由として睡眠不足や睡眠の質の低さが考えられるため、寝る前にスキンシップをたくさんとって、安心感で寝入りやすいようにしてあげることが大切です。
普段からスキンシップはしている、もしくはスキンシップが苦手なお子さんの場合は、会話を増やすようにしましょう。子どもの気持ちに寄り添う意識でコミュニケーションをとると、お子さんが自分のことを理解してくれていると感じ、行きたくない理由を話してくれることもあります。
もしもお子さんが自分の気持ちを話してくれたときは、「よく話してくれたね」「話してくれてありがとう」と伝えてあげてください。登園渋りや登園拒否を防止・解決するには、困ったことがあったときにお子さんがすぐに相談してくれる親子関係の構築が大切です。
慣れない環境での不安を和らげる
登園渋り・登園拒否の対策としては、お子さんの不安を軽減してあげることがかなり重要です。
特にASDの特性があるお子さんだと、はじめてのことや知らないことに強い不安や抵抗を感じることがあります。また、想定外のことが起きたり、何をするのか分からなかったりすると、不安やパニックを引き起こしてしまうことも。「どんな場所でどんなことをするのか」を前もって知っておけば不安を和らげられるので、慣らし保育の期間を長めに設けるのも対策の1つです。
短時間でも「通園できた」という成功体験を積んでいくことにより、自信や安心につながって徐々に長く通園できるようになります。
また、家にあるものやお気に入りのものを持たせるのも、慣れない環境での不安を和らげるのに効果的です。おもちゃやキーホルダーなどは園によって持ち込みが禁止されていることもあるので、お気に入りのハンドタオルやハンカチを持たせてあげるのがおすすめ。ハンドタオルやハンカチはお子さんが心地よく感じるアイテムで、慣れない場所での緊張や不安を和らげるのに役立ちます。
園と連携して特性に寄りそう
発達障害の特性によって苦手なことがある場合は、できないことを責めるのではなく、家庭でお子さんと一緒に練習したり、園に相談して特性に関する配慮をお願いしたりしてみましょう。
感覚の過敏性が登園渋りや登園拒否の原因になっている場合、園での取り組みや環境がお子さんにとってストレスになっているかもしれません。早めに園と連携して特性に寄り添ったサポートを行うことで、お子さんの登園渋りや登園拒否が解消される可能性があります。
ただ、特性に応じた適切なアプローチを行うには、発達障害に関する専門的な知識が必要です。保育園や幼稚園では対応が難しい場合は、児童発達支援事業所や各自治体に設置されている子供相談窓口、発達支援センターなどの専門機関に相談してみましょう。
また、療育サービスを活用して訓練を受けるという方法もあります。
登園できたらしっかり褒める
お子さんが短時間でも登園できたときは、しっかりと褒めるようにしましょう。そのほかにも、登園の準備ができたとき、園の前でバイバイできたとき、園から帰ってきたときなどお子さんのできたことをこまめに褒めることで、自己肯定感が向上し、良い行動が定着しやすくなります。
発達障害のあるお子さんは慣れない環境で不安を感じたり、特性による苦手から嫌な経験をしたりしやすく、園に対して「嫌なところ」というネガティブなイメージを抱きがちです。ネガティブなイメージをすぐになくすのは難しいため、園が楽しい場所だということを日々伝えたり、できることを少しずつ増やしたりしながら、前向きな気持ちで登園できるようにサポートしましょう。
ただ、「明日も頑張ろう」「明日はちゃんと行こうね」などの声かけはお子さんがプレッシャーを感じてしまうので、「明日は粘土遊びがあるんだね、楽しそう!」と前向きな言葉をかけることが大切です。
また、良い行動を褒めるときは、抽象的な表現だと伝わりにくいので、どんな行動が良かったのか具体的に分かりやすく伝えるのがポイント。「大きな声で発表できてかっこよかった!」のように良かった行動を明確に分かりやすく伝えるのが効果的です。