自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)
幼児の自閉スペクトラム症
(ASD)とは
自閉症スペクトラム症とは、主に「人とのコミュニケーションにおいて苦手や困難さがある」「こだわりの強さや感覚のかたよりがある」という特性があります。
特性は、2歳ごろまでにあらわれることが多いですが、個人差があり特性のあらわれ方は人それぞれです。
他の発達障害の特性と重なり合うことも少なくありません。
自閉スペクトラム症(ASD)の
3つの特性
【その1】コミュニケーションが
苦手
表情が乏しく、相手の感情にも無関心。
そのため、表情から気持ちを読み取ることや、相手の意図を理解しにくいのが特徴です。
また、人の話が耳に入らない、自分の気持ちを言葉にできないなど、スムーズなコミュニケーションが苦手なので、うまく人間関係が築けません。
詳細を見ていきましょう。
人の気持ちを、表情やしぐさから
読み取れない
- 見えないことが理解できない
- 雰囲気を感じたり表情を読んだりすることが苦手
- 柔軟な対応ができない
見えないことが理解できないので、悪気がなくてもルールを破ってしまう傾向があります。
また、相手の表情やしぐさから気持ちを読み取るのが苦手です。
静かにしなければならない場面でも、歌いたければ歌い、面白いことがあれば笑ってしまいます。
「空気が読めない」という周囲の眼差しには、気づいていないのです。
柔軟な対応も難しいので、太っている人に対して「太っているね」と相手の気持ちを考えずに、思ったことをストレートに伝えてしまいます。
喜怒哀楽の表現方法が苦手、
人にあまり関心がない
- 表情が乏しいので、愛着が薄いように感じる
- 他人に興味がない
おむつが濡れたりお腹が空いたりしてもあまり泣かず、人見知りや後追いもしないという特性です。
コミュニケーションのキャッチボールが不得手なので、保護者や周囲の人への安心感や愛着が芽生えにくいからだと考えられています。
人への関心が薄く、不安に強いので、迷子になっても泣かないというようなことも。
言葉の発達に遅れや偏りがある
2歳を過ぎても単語が出てこなければ、言葉の発達が遅れていると考えて、相談に行くことがおすすめです。
そのあとに「言葉が洪水のように出てきた」というケースもありますので、この時点では一概に発達障害かどうかは確定できません。
また、「オウム返し」もよく見られますが、聞いたことをそのまま話しているだけで、質問の意味は理解できていないことがほとんど。
伝えたいことがあっても、上手く言葉にできないのです。
「まだ言葉が出なくて」と言うと、家族や親族の多くが「心配しすぎじゃない?」と言うのではないでしょうか。
何か行動して、専門の先生に言われた「心配しすぎ」は信じて心を軽くしてほしいのですが、まだ何も調べていないうちの「心配しすぎ」は「心配しすぎていい!」と声を大にして言います!
早くから心配して動き出すことで、「やっぱり心配してよかった」「心配しすぎだったね、よかった」のどちらかになるだけ。
ぜひ、気になることがあれば早めに相談を!相談先は次のページにまとめています。
【その2】特定のものやことに
こだわりがある
「毎日同じ行動を繰り返す」、「予定外のことに対応するのが難しい」、「同時に複数のことをするのが難しい」など、特定のものやことに強いこだわりがあります。
こだわりが強いがために、臨機応変な対応が苦手で、ひとりひとり、そのこだわりの内容は異なります。
以下に、よく見られる特性をまとめました。
同じ行動を繰り返す
身体を揺らす、クルクル回る、目の前で手をひらひらさせるなど、同じ行動を繰り返す「常同行動」が見られます。
同じ行動を繰り返すのは、不安や緊張をやわらげるためと考えられています。
パターンが決まっていると安心するので、無理にやめさせようとしないで個性のひとつとして受け入れることが大切です。
予定外のことに対応するのが苦手
毎日同じ行動を繰り返すことを好むので、予定外のことに対応するのが苦手です。
例えば、いつも通る道が工事中で通れなくなっていると、どうしたら良いかわからず動けなくなってしまいます。
同時に複数のことをするのが苦手
同時に複数のことができないので、「体操着に着替えて体育館に集合してください」と言われると、体操着に着替えることに集中してしまい、どこに行けばよいかわからなくなってしまいます。
そのため、やることをひとつずつ伝えてあげることで行動しやすくなります。
【その3】感覚に偏りがある
自閉症スペクトラム症の子の中には「感覚に偏りがある」ことがあります。
他の人は気にもとめない刺激に過剰に反応して、ストレスを感じてしまうのです。
感覚が過敏な子がいる一方で、感覚が鈍感な子もいます。
感覚の偏りは、自分の意思や努力では解決できないので、周りの人の理解や配慮が必要です。
視覚過敏
複数ある中からひとつのものを見つけるのが苦手です。
蛍光灯のちらつきが気になったり、人の顔がモザイクのように見えたりすることがあります。
そのため、文字が読みにくかったり、集中できなかったりするのです。
感覚過敏
洋服のタグや縫い目、粗い生地などが触れると、ヒリヒリしたり痛みを感じてしまいます。
そのため、刺激のある洋服を脱ごうとしたり、気に入った洋服しか着ないことがあるのです。
また、肌に触れただけでも痛みを感じることも。
圧覚過敏
抱きしめられると圧迫感を感じる、帽子をかぶると頭が締め付けられるように感じます。
保護者が優しく抱きしめたり抱っこしたりしても、身体をのけぞって嫌がることがあるのです。
その一方で、強く抱きしめられると安心する子もいます。
聴覚過敏
大きな音を聞くと痛みを感じ、轟音が鳴り響いているように感じてしまいます。
騒がしい場所では耳を塞ぎ、同常行動で安心しようとします。
駅やスーパーなどでは、全ての音が同じレベルで耳に入るので混乱してしまうことも多くあります。
嗅覚過敏
強いにおいが苦手で、他の人が心地よく感じるにおいでもつらく感じ、吐き気をもよおすことがあります
一方で、馴染みのあるにおいには安心するので、食べ物や洋服などのにおいを嗅いで、周囲の状況を確かめようとします。
味覚過敏
薄味のものや特定の感触や温度のものだけを食べ続けることがあります。
また、特定の食材や同じパッケージのものだけを食べるなど、見た目にこだわりがある場合も。
そのため、多くの人が美味しいと感じるものが食べられないことも。
痛覚鈍感
感覚に鈍感な場合、痛みを感じにくいことがあります。
ケガしても痛がらなかったり、血が滲むほど強く掻きむしったりするのが特徴です。
また、パニックになると自分を痛めつけてしまう、自傷行為に及ぶこともあります。
平均感覚不全
内耳にある身体のバランスを保つセンサーが上手く働かないので、不器用だったり運動が苦手だったりします。
姿勢が崩れやすいので「やる気がない」と見られてしまうことも少なくありません。
また、クルクルと回っても目が回らず、気持ち悪くならない子もいます。
おうちでできる対応のポイント
言葉は具体的に
言葉は文字通りに受け取ってしまうので、曖昧な表現や慣用句、代名詞を使うと混乱します。
そのため、具体的で短い言葉で、ゆっくりと伝えるといいですよ。
繰り返し同じことを伝える場合は、伝え方を統一するのがポイントです。良かれと思って言いかえをしてしまうと、混乱を招くこともあります。
パニックになっても冷静に対応
子どもがパニックを起こしたら、静かなところに誘導して、落ち着くのを待ちます。抱きしめると、混乱してますますパニックになってしまうこともあります。保護者様も大変ですが、「今は泣き叫んで発散したいんだ」と思って、待ってあげてください。
パニックが落ち着いたら、よくない行動を止めたことに対して褒めて、「叱らないでルールを端的に教えてあげる」ように接しましょう。
ひとりでいられる場所と
時間を確保
ひとりで遊びたいという場合は、本人の気持ちを尊重します。
無理に友達と遊ばせようとする必要はありません。
ただし、ひとりでいることと、孤立することは別物なので、必ず近くで見守るようにしましょう。
趣味の幅を広げるサポート
同じ遊びを繰り返している場合、遊びが終わったタイミングで他の遊びに誘います。
無理強いはせず、少しずつ興味関心を広げられるようにサポートすることが大切です。
スポーツなら、集団行動が苦手なので、水泳や陸上など個人種目を選択するといいですよ。
時間の過ごし方を具体的に示す
スケジュールがはっきり決まっていると、1日の見通しが持てるので安心して過ごせます。
1日の活動の流れをスケジュール表にするのがおすすめです。
お弁当を食べたあとはトイレに行くなど、やるべきことを具体的に示すようにしましょう。
一目で内容がわかるように
見えないものから意味を汲み取るのは苦手ですが、実際に目で見たものを理解するのが得意です。
そのため、一度見たり覚えたりしたことは忘れません。
タンスの引き出しに「靴下」「ズボン」など文字やイラストでラベリングすると、一目で内容がわかるので理解しやすくなります。
視覚に働きかけるカードを用意
耳で聞くよりも目で見る能力のほうが優れている傾向にあるので、絵や写真を使ったカードを用いることでコミュニケーションが取りやすくなります。
繰り返しカードを使うことで、理解して行動できるようになっていきます。
楽しく食べることを意識
正しく食べることよりも楽しく食べることを意識しましょう。
「座りなさい」「遊ばないで食べなさい」と食事のたびに注意されると苦痛になってしまいます。
好きなものを食べさせて、食事が楽しくなってきた段階で、苦手なものに挑戦するような工夫が大切です。
自閉スペクトラム症(ASD)の
診断時期と、
保護者様が抱え込まないために
自閉スペクトラム症は発達障害の中でも、小さな時期から症状が出やすく、1歳半検診で「経過を見ましょう」と言われて特性に気づくことも多いはずです。
確定診断は早くて3歳ごろ。
自閉スペクトラム症と内気な子の見極めは難しく、程度によって特性のあらわれ方が大きく異なります。
そのため、専門医にかかっても、すぐに診断が出ないことは珍しくありません。
診断名に関係なく、大切なことは「ありのままを受け入れる」ことです。
どのような関わりやサポートをしたら、その子が生きやすくなるかを考えていくようにしましょう。
子どもの生きやすさのサポート、また、保護者の皆さんが少しでも楽になるためにも、早くから療育を活用していくことをおすすめします。
療育は、かんたんに言うと「今の困りごとの解決と、将来の自立をめざす」ための支援です。
ひとりひとりの状態や特性に合わせて、アプローチして、小さなステップを繰り返して、少しずつ成長していくことができます。
療育イコール発達障害認定ではないので、安心してください。発達に不安があるなら、通所受給者証を取得すれば通うことができます。
公的・民間の様々な支援サービスがありますので、ぜひ、お子様にあった支援を見つけてくださいね。