発達障害の確定診断で行われる知能・発達検査について
【東京都】発達・知能検査の現状の課題
発達障害のあるお子さんが特別支援教育を受ける際、自治体によっては障害の有無や特性を調べる発達・知能検査が必要です。一方で、発達障害のお子さんを持つ保護者様からは「検査の予約をとるのに時間がかかり、支援の開始が遅れた」という声もあがっています。
支援を必要としている当事者からの声を受け、2023年12月に行われた東京都議会の代表質問にて、都民ファーストの会の議員から「速やかに支援を受けられる体制をつくるべき」という指摘がされました。これに対し、小池知事は「検査の実施状況などの実態を把握し、地域の検査体制の充実を検討する」と回答。具体的な施策はまだ決まっていませんが、東京都では各自治体での検査の実施状況などを速やかに調査し、支援策を検討するとしています。
そもそも発達・知能検査とは
発達検査は心身の発達の状態を調べる検査のことで、発達障害の有無を診断するためのものではありません。ただ、発達障害の確定診断での判断材料において、発達検査が特に大きなウェイトを占めているため、重要な検査であることは間違いないでしょう。
発達障害の確定診断では、発達検査をはじめ、成育歴や問診、知能検査の結果などを総合的に判断し、発達障害かどうかを診断します。発達検査とあわせて行われることが多い知能検査は、物事に対する理解や知識、課題を解決するための認知能力がどのぐらいあるのかを調べる心理検査です。
療育を受ける際は、発達検査や知能検査の結果をもとに療育計画を作成し、お子さんに合ったサポートやトレーニングが行われます。
発達・知能検査の実施方法
A式検査
言語能力が検査結果に大きく影響する知能検査です。文章題が多く出題され、社会生活を送るうえでの知能を測ることができます。
B式検査
図形や数字など理数的な問題が多く出題される知能検査です。もともとはA式検査だと正確な測定が難しい外国人を対象に開発された検査ですが、言葉の発達が不十分なお子さんでも受けられるので、現在では学校でも一般的に使用されています。
A式検査と違って言語能力の影響は受けにくいものの、試験方法などを最初に説明する監督者の指示に従う必要があるため、聞き取り能力などが必要になります。
Ab混合式検査(C式検査)
A式検査とB式検査の要素を取り入れた知能検査です。Ab混合式検査では、やさしい問題から難しい問題まで、幅広い難易度の問題を作成できます。
集団式検査
学校などの大勢の人を対象とした筆記式の知能検査です。集団式検査には、小学校の就学時に行われる「就学時知能検査」があります。就学時知能検査は、入学する児童の発達の程度や偏りを把握するのが目的です。就学時知能検査の結果は、通級指導教室や特別支援学級などの個別指導案に反映され、支援・指導を行う際の参考材料となります。
個別式検査
集団式検査にて気になる点や偏り、特徴的な結果が出た場合、個別式検査で再検査が行われます。一斉に調べる集団式検査と違い、個別式検査では検査官が児童と1対1で話をしながら様子や状態を観察。積み木や絵カードなどの道具も使用し、児童の発達の様子を細かく観察して状態を把握します。
発達障害の確定診断や就学後の指導案の作成のために行われる知能検査としては、個別式検査が主流です。
発達・知能検査の種類
ウェクスラー式知能検査
お子さんから大人まで幅広い年齢に対応している代表的な知能検査です。年齢に応じて「幼児期」「児童期」「成人期」に分類され、それぞれの時期に適した検査が行われます。ウェクスラー式知能検査で算出されるのは偏差IQで、平均の100を基準に子どもの得手・不得手を把握することが可能です。
田中ビネー知能検査
田中ビネー知能検査は、日本で行われている代表的な知能検査の1つです。小さいお子さんでも適切に検査を行えるように、積み木などのおもちゃや絵本のような図版が採用されています。
田中ビネー知能検査では、お子さんの苦手なことを具体的な項目で示してくれるので、適切なサポートやケアにつなげることができます。現在メインで行われている田中ビネー知能検査Ⅴの適応年齢は2歳~成人までですが、特に小学校にあがる前の5~6歳を重点的に調べられる検査です。発達障害の確定診断においても、田中ビネー知能検査Ⅴが多く採用されています。
新版K式発達検査
1951年に京都市の児童院で開発された個別式の検査です。0歳~成人までが対象で、発達の過程を精密に把握できるように作られているのが特徴。おもちゃなどを使用しながら遊び感覚で取り組める課題が多いため、お子さんの自然な行動を観察するのに適しています。
「姿勢・運動」「認知・適応」「言語・社会」の3つの領域から発達の状態を測定。その結果をもとに、発達が何歳相当かを示す発達年齢と発達指数を算出します。
津守式乳幼児精神発達診断法
保育研究者の津守氏が開発した発達検査で、面接者が養育者にお子さんの日常生活での行動を質問する形式で行われます。道具や設備を使用しない簡単な検査ですが、養育者による評価の影響を受けやすいという側面も。適用年齢によって扱い領域の内容が多少異なるものの、基本的には「運動」「探索」「社会」「生活習慣」「言語」の5つの領域で発達年齢が算出されます。
津守式乳幼児精神発達診断法では発達プロフィール表が作成され、お子さんの発達状態の全般像や特性を把握することができます。
発達・知能検査を受けられる場所
- 総合病院の発達外来、発達に関する診察を行っているクリニック、児童精神科などの医療機関
- 発達障害者支援センター
- 児童相談所
- 保健センター
- 自治体の子育て相談窓口
- 福祉施設・事業所など