3歳児健診では何をする?内容と発達のチェックポイント
はじめに
3歳児健診の案内が届くと、「どんなことをするのだろう」「うちの子は言葉が少ないけれど、何か言われるのだろうか」と、期待よりも不安が大きくなってしまう保護者の方は少なくありません。3歳は園での様子やお友だちとの関わりが見えてくる時期で、周りと比べる気持ちが生まれやすい年齢でもあります。
3歳児健診は、「できていないこと」を探して評価する場ではありません。身体の成長や目・耳・歯の状態、そして心とことばの育ちを専門職が一度に確認し、今必要なサポートがあるかを一緒に考えるための機会です。
この記事では、3歳児健診で実際に行われる検査項目と当日の流れ、家庭で済ませておく検査や持ち物、発達面でどこを見られるのかを具体的に整理しました。当日を「相談できる日」に変えるための準備にお役立てください。
3歳児健診とは?市区町村に義務づけられた健診
法律で定められた2回の健診のうちの1つ
3歳児健診(3歳児健康診査)は、母子保健法第12条にもとづいて市区町村が実施を義務づけられている健診です。義務づけられているのは「1歳6か月児健診」と「3歳児健診」の2回のみで、ほかの月齢・年齢の健診(1か月児健診、3〜6か月児健診、9〜11か月児健診、5歳児健診など)は同法第13条にもとづく任意の健診という位置づけになっています。
つまり3歳児健診は、乳幼児期の締めくくりとして、全国どこに住んでいても必ず受けられるように整えられた節目の健診です。費用は公費で負担されるため、原則として自己負担はありません。
参照元:こども家庭庁「乳幼児健診に関する取組み」(2026年9月調査時点)(https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/nyuyojikenshin)
対象年齢と受けるタイミング
対象は「満3歳を超え満4歳に達しない幼児」です。実際の実施時期は自治体によって幅があり、3歳0〜1か月ごろに集団健診を行う市区町村もあれば、3歳6か月〜3歳8か月ごろに設定している市区町村もあります。誕生日月の前月末ごろに案内が郵送されるのが一般的で、指定された日程・会場に出向く形が多くなっています。
案内が届いたら、健診日と受付時間、家庭で事前に行う検査、持ち物と問診票の種類をまず確認しておくと当日慌てません。
実施場所と当日のおおまかな流れ
多くの自治体では保健所・保健センターでの集団健診として実施され、小児科医・歯科医師・保健師・管理栄養士・歯科衛生士・心理職などが関わります。医療機関での個別健診を採用している自治体や、集団健診に参加しにくいお子さんに個別健診を用意している自治体もあります。
当日の流れは、おおよそ次のような順番で進みます。
- 受付(問診票・母子健康手帳・尿検体の提出)
- 身体計測(身長・体重など)
- 問診・保健師による聞き取り
- 内科診察/歯科健診
- 視覚検査・聴覚検査の確認
- 保健指導、必要に応じて個別相談
所要時間は1時間〜1時間半程度を見ておくと安心です。待ち時間が長くなりやすいため、絵本や静かに遊べるおもちゃ、飲み物を用意しておくとお子さんの負担が軽くなります。
1歳6か月児健診との違い
1歳6か月児健診では、歩行やことばの出始め、指さしといった「発達の芽」が中心に確認されます。3歳児健診では、そこから約1年半の育ちを踏まえ、次のような点まで幅広く見ていきます。
- 会話でやりとりができるか(二語文・三語文、質問への応答)
- 同年代の子どもとの関わり方、集団での様子
- 目と耳の機能(視力・屈折・聴力)、尿検査による腎臓・泌尿器の確認
- 食事・排泄・着替えなど生活習慣の自立
視覚検査や尿検査が加わる点、そして「ことばが出ているか」から「ことばでやりとりができているか」へと視点が移る点が、3歳児健診の特徴です。
3歳児健診の内容【検査項目を一つずつ解説】
項目や順序は自治体によって異なりますが、多くの市区町村で共通して行われるのは次の検査です。
問診(保護者への聞き取り)
問診票では、運動・認知・社会性・生活習慣に関する発達の確認項目と、「気になること」の有無をたずねる項目が用意されています。自治体によっては合計30項目以上にわたることもあります。ここでの回答が、当日どの専門職に相談をつなぐかを決める入口になります。迷った項目は「できる/できない」で無理に割り切らず、余白に具体的な様子を書き添えておきましょう。
身体計測
身長・体重を測り、成長曲線に沿って発育の推移を確認します。自治体によっては胸囲や頭囲も測定します。数値そのものよりも「その子なりのカーブを描いて伸びているか」が見られるポイントです。
内科診察
小児科医が、栄養状態、心音・呼吸音、皮膚の状態、脊柱や四肢、性器、そけい部などを診察します。あわせて予防接種の進み具合や、神経学的な所見(歩き方、姿勢、片足立ちなどの動き)も確認されます。
歯科健診
むし歯の有無と本数、歯並び・噛み合わせ、歯肉の状態、かむ・飲み込むといった摂食機能を確認します。3歳児健診はむし歯の統計上も重要な節目とされており、仕上げ磨きやおやつの与え方について歯科衛生士から具体的な助言を受けられます。
尿検査
たんぱく・糖・潜血などを調べ、腎臓や泌尿器の病気を早期に見つけることを目的としています。健診当日の朝の尿を採って持参する自治体が多く、採尿用の容器やシートは事前に郵送されます。
視覚検査(視力検査・屈折検査)
3歳児健診の視覚検査は、弱視や斜視、強い屈折異常(遠視・近視・乱視)を早期に見つけるために行われます。弱視の治療が効きやすい「視覚の感受性期」は3歳を過ぎると次第に弱まり、6〜8歳ごろまでがピークとされているため、3歳の時点で見つけられるかどうかが将来の見え方に関わります。
検査は、家庭で行う一次検査(視力検査)と、健診会場での確認・二次検査を組み合わせて実施されます。近年は、目に光を当てて数秒で屈折の状態を測る屈折検査機器(スポットビジョンスクリーナーなど)を導入する自治体が増えており、ことばでの応答が難しいお子さんでも検査を受けやすくなっています。
参照元:公益社団法人日本眼科医会「3歳児健診における視覚検査マニュアル」(2026年9月調査時点)(https://www.gankaikai.or.jp/school-health/2021_sansaijimanual.pdf)
聴覚検査
聞こえの確認は、家庭でのささやき声による検査と問診を組み合わせて行われるのが一般的です。「後ろから小さな声で呼びかけると振り向くか」「テレビの音量を上げたがらないか」「発音が不明瞭ではないか」といった日常の様子も判断材料になります。中耳炎などで一時的に聞こえにくくなっていると、ことばの遅れにつながることがあるため、気になる点は必ず伝えましょう。
保健指導・個別相談
一連の検査のあとに、保健師による保健指導があります。食事や睡眠、歯みがき、トイレトレーニング、予防接種、事故防止などについて助言を受けられ、必要に応じて管理栄養士・歯科衛生士・心理職との個別相談につないでもらえます。発達の心配は、この場が最も具体的に話せるタイミングです。
参照元:港区「3歳児健康診査について」(2026年9月調査時点)(https://www.city.minato.tokyo.jp/chiikihoken/kenko/kenko/boshi/1saijo/3shinsa.html)
事前に家庭で行う検査と持ち物
3歳児健診は、当日までに家庭で済ませておく準備があるのが特徴です。前日に慌てないよう、案内が届いたら早めに取りかかっておきましょう。
視力検査のやり方
案内に同封されるランドルト環(一部が切れた輪の図)を使い、多くの自治体では視力0.5に相当する視標を2.5mの距離から見せて、片目ずつ切れ目の向きを答えられるかを確認します。判定のポイントは次のとおりです。
- 2.5mの距離は目分量ではなく、メジャーなどで正確に測る
- 片目を隠すときは、指のすき間から見えていないか確認する
- 「上・下・右・左」が難しい場合は、手元の同じ図と照らし合わせて指さしで答えさせる
- 遊びの延長で行い、うまくいかない日は日を変えて再挑戦する
正しく答えられない方向がある、片目だけ反応が違う、顔を傾けてのぞき込む——こうした様子は結果票にそのまま書いて当日伝えてください。「できなかった」ことも大切な情報です。
聴力検査のやり方
お子さんの後ろ2mほどの位置から、ささやき声で身近な物の名前を伝え、聞き取って答えられるかを確認します。テレビや換気扇を止めた静かな部屋で、口元が見えないように行うのがコツです。
尿の採り方
当日の朝、起きてすぐの尿を採るよう指定されることが多いです。トイレトレーニング中で難しい場合は、採尿シートを使うなど自治体が示す方法を確認しましょう。どうしても採れなかったときは、当日申し出れば別日での提出や再検査を案内してもらえます。
持ち物チェックリスト
- 母子健康手帳(保護者の記録欄を記入しておく)
- 記入済みの問診票・アンケート類
- 視力・聴力検査の結果票
- 当日朝の尿検体
- 診察時に使う敷きもの(バスタオルなど)
- 着脱しやすい服装、替えのおむつ・パンツ
- 待ち時間用の絵本やおもちゃ、飲み物
- 気になることを書いたメモ
3歳児健診で発達面はどこを見られる?
「発達障害かどうかを判定する検査」が行われるわけではありません。3歳児健診で見られているのは、次のような領域の育ちのバランスです。
ことば・コミュニケーション
- 二語文・三語文で話せるか
- 自分の名前や年齢を言えるか
- 「お名前は?」「何歳?」などの簡単な質問に答えられるか
- 視線を合わせてやりとりが続くか
- 簡単な指示(「これをママに渡して」など)が伝わるか
社会性・対人関係
- 友だちや大人と関わって遊べるか
- ごっこ遊びやまねっこ遊びができるか
- 順番を待つ、貸し借りをするなどのやりとりができるか
- 保護者から少し離れて過ごせるか(母子分離の様子)
運動(からだの動きと手先)
- 走る、階段を昇り降りする、片足で少し立てる
- 積み木を4個以上積める
- クレヨンで丸を描く、はさみを使おうとする
生活習慣・身のまわりのこと
- 日中の排尿がおおむね自立してきているか
- スプーンやフォークで自分で食べられるか
- 着替えを自分でやろうとするか
- 睡眠リズムが安定しているか
行動面(多動・こだわり・感覚)
- じっとしている場面で著しく動き回る、待つのが極端に苦手
- 予定の変更やいつもと違う手順で強く混乱する
- 音・におい・触感への過敏さや、逆に反応の薄さがある
- かんしゃくが激しく、切り替えに時間がかかる
これらは単独で見られたからといって発達障害を意味するものではありません。複数の領域で気になる様子が続いているか、園や家庭の生活に困りごとが生じているかが、専門職が丁寧に確認したいポイントです。
参照元:新潟県「Ⅲ 3歳児健康診査の手引」(2026年9月調査時点)(https://www.hapiny.niigata.jp/download/h27_sannsaijikensinn5.pdf)
健診を「相談できる日」にするための準備
気になることをメモにして持参する
「指摘されたくないから黙っておこう」と考えてしまう方もいますが、健診は支援につながる数少ない公的な入口です。心配を伝えたからといって、すぐに診断がつくわけではありません。当日は気持ちに余裕がなくなりがちなので、次の内容をメモにまとめておくと短い時間でも要点が伝わります。
- いつ・どんな場面で困っているか(例:公園から帰るときに毎回30分泣く)
- 家庭と園で様子が違うか
- ここ数か月でできるようになったこと
- 一番聞きたいこと(優先順位をつけて2〜3点)
当日うまくできなくても大丈夫
初めての場所、たくさんの人、白衣——3歳のお子さんにとって健診会場は刺激の多い環境です。泣いて検査ができなかったり、いつもは言える名前が言えなかったりするのはよくあることで、それだけで「発達に問題あり」と判断されることはありません。家庭ではできていることは、その事実を伝えましょう。
健診後の流れ|「要観察」と言われたら
結果は当日に伝えられ、経過観察になることも
集団健診では、その日のうちに「異常なし」「経過観察」「要精密検査(医療機関の受診)」「要指導」などの区分で結果が伝えられます(尿検査など後日郵送される項目もあります)。
「もう少し様子を見ましょう」と言われた場合は、数か月後の再健診や、保健師による電話・家庭訪問でのフォローが入ります。この期間は「様子見で放置」ではなく、気になることがあれば途中でも保健センターに相談できる期間です。
発達相談・発達検査
心理職による発達相談や、発達検査(新版K式、田中ビネー式、WPPSIなど)を案内されることがあります。検査は優劣を測るものではなく、得意なこと・苦手なことの傾向をつかむためのものです。どの力がどの段階まで育っているかが分かると、支援の目標を具体的に設定しやすくなり、家庭や園での関わり方の手がかりにもなります。
医療機関での精密検査
視覚・聴覚・身体面の所見や発達の評価が必要と判断された場合は、眼科・耳鼻科・小児科や児童精神科、発達外来などへの紹介を受けます。地域によっては初診まで数か月待つこともあるため、紹介を受けたら早めに予約を取っておくと安心です。
児童発達支援につながるケース
発達の面でサポートがあると安心と判断された場合、未就学のお子さんは「児童発達支援」を利用できます。利用には市区町村が発行する通所受給者証が必要で、「相談窓口で申請 → 面談・意見書などの提出 → 支給決定 → 事業所と契約」という流れが一般的です。診断がなくても、意見書や相談の記録で利用できる場合があります。
児童発達支援では、発達の段階に合わせて目標を細かく分け、できることを一つずつ増やしていく形でことばや人との関わりを育てていきます。3歳はこうした積み上げが力になりやすい時期で、困りごとが大きくなる前に、専門の支援者と家庭が同じ方針で関われることが早めに相談する一番のメリットといえます。
Q&A:3歳児健診によくある疑問
Q:都合が悪くて健診日に行けません。受けなくても大丈夫?
A:3歳児健診は、目・耳・歯・腎臓の病気や発達の心配を見つける貴重な機会です。欠席の連絡を入れれば、別日程や医療機関での個別健診を案内してもらえます。
Q:「引っかかった」ら発達障害と診断されたということ?
A:違います。健診はふるい分け(スクリーニング)の場であり、診断を行う場ではありません。「もう少し詳しく見たい」「相談につなげたい」という意味での経過観察が大半です。相談を重ねるなかで見通しが持てるようになったり、家庭での関わり方の工夫や支援の利用につながったりと、その後の進み方はお子さんによって異なります。
Q:健診では何も言われなかったけれど、園での様子が心配です。
A:健診と健診の間でも、保健センターや子育て世代包括支援センターの発達相談はいつでも利用できます。就学前の年齢では5歳児健診の実施を進める国の方針もあり、地域の相談体制は広がってきています。気づいた時点で相談するのが最も早い支援につながります。
Q:発達の相談をしたら、園や小学校に伝わってしまいませんか?
A:保護者の同意なく情報が共有されることはありません。園と連携したほうが支援しやすい場合には、必ず相談のうえで進められます。
まとめ
3歳児健診は、身体計測・内科診察・歯科健診・尿検査・視覚検査・聴覚検査・問診と保健指導を組み合わせた、乳幼児期の総まとめとなる健診です。家庭で行う視力・聴力の検査と尿の採取、問診票の記入を早めに済ませておくと、当日は相談に時間を使えます。
そして何より、この日は「気になることを専門職に聞ける日」です。ことばの伸び方、かんしゃくの強さ、集団での過ごしにくさ——どれも保護者だけで判断する必要はありません。メモを1枚用意して、そのまま伝えてみてください。
経過観察や相談を案内されたときも、それは早く支援につながれたということです。お子さんのペースに合った関わり方を見つけるために、地域の相談窓口や児童発達支援を活用していきましょう。

