1歳半検診の内容は?チェック項目と当日の流れ
はじめに
1歳6か月ごろは、歩き方が安定してきたり、ことばが出はじめたりと、成長を実感しやすい時期です。その一方で、周りのお子さんと比べて「まだ単語が出ていない」「指さしをしない」といった違いも見えやすくなり、健診の案内が届いたタイミングで急に不安が大きくなる保護者様も少なくありません。
1歳半健診(1歳6か月児健康診査)は、お子さんの「できない」を探す場ではなく、成長を一緒に確認し、必要な支援につなげるための場です。何がどのように見られるのかを知っておくだけでも、当日の緊張はずいぶんやわらぎます。
この記事では、1歳半健診で実際に行われる内容を国の実施要領にもとづいて整理し、積み木や指さしといった発達のチェックが何をみているのか、そして「様子を見ましょう」と言われたときにどう受け止め、どこへ相談すればよいのかまでをまとめました。
1歳半健診(1歳6か月児健康診査)とは
市区町村に実施が義務づけられている健診
1歳半健診は、母子保健法第12条にもとづく健康診査です。1歳6か月児健診と3歳児健診は、市区町村に実施が義務づけられている2つの健診で、全国どこに住んでいても受けられる仕組みが整えられています。乳幼児健診は2023年4月からこども家庭庁の所管となりました。
参照元:こども家庭庁「乳幼児健診に関する取組み」(2026年9月調査時点)(https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/nyuyojikenshin)
対象となるのは「満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児」で、実施主体は市町村(特別区を含む)です。多くの自治体では対象月齢になる前に個別の案内が郵送されるため、届いた通知に沿って日程を確認しましょう。
参照元:厚生労働省「乳幼児に対する健康診査の実施について」(2026年9月調査時点)(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta9663&dataType=1&pageNo=1)
費用・持ち物・所要時間の目安
費用は公費で負担されるため、健診そのものは無料です。ただし、むし歯予防のフッ化物塗布など任意の項目は自治体によって有料の場合があります(例:神戸市は500円)。
持ち物や流れは自治体ごとに異なりますが、一般的には次のようなものが必要です。
- 母子健康手帳
- 事前に記入した1歳6か月児健康診査の質問票(問診票)
- 普段使っている歯ブラシ
- おむつ・着替え・飲み物など、待ち時間に必要なもの
当日は「受付→問診→歯科診察→身体計測→小児科診察→育児相談・栄養相談」といった流れで進み、おおむね1〜2時間程度かかります。眠くなる時間帯や授乳のタイミングと重なると機嫌が崩れやすいので、余裕を持って出かけられると安心です。
参照元:大阪市「1歳6か月児健康診査」(2026年9月調査時点)(https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000370532.html)
参照元:神戸市「1歳6か月児健康診査」(2026年9月調査時点)(https://www.city.kobe.lg.jp/a86732/kosodate/maternity/kenshin/h007.html)
1歳半健診の内容|国が定めている診査項目
一般健康診査でみる10の項目
1歳半健診の「一般健康診査」では、国の実施要領で次の項目を診ることが定められています。
- 身体発育状況
- 栄養状態
- 脊柱及び胸郭の疾病及び異常の有無
- 皮膚の疾病の有無
- 四肢運動障害の有無
- 精神発達の状況
- 言語障害の有無
- 予防接種の実施状況
- 育児上問題となる事項(生活習慣の自立、社会性の発達、しつけ、食事、事故等)
- その他の疾病及び異常の有無
注目したいのは、10項目のうち「精神発達の状況」「言語障害の有無」「育児上問題となる事項(社会性の発達を含む)」という3つが発達に関わる項目だという点です。1歳半健診が発達の節目としてよく話題になるのは、この時期にことばと社会性が大きく伸びるため、健診の枠組みにもしっかり組み込まれているからです。
参照元:厚生労働省「乳幼児に対する健康診査の実施について」(2026年9月調査時点)(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta9663&dataType=1&pageNo=1)
歯科健康診査
1歳半健診には、一般健康診査とは別に「歯及び口腔の疾病及び異常の有無」を確認する歯科健康診査が含まれます。むし歯の有無だけでなく、歯の生え方や噛み合わせ、歯みがきの習慣についても確認され、仕上げみがきの方法や間食のとり方について歯科衛生士からアドバイスを受けられます。
身体計測と診察
身体計測では身長・体重・頭囲を測り、母子健康手帳の成長曲線と照らし合わせて発育の流れを確認します。1回の数値が平均から外れているかどうかよりも、その子なりのカーブに沿って伸びているかを重視します。診察では、発育・栄養・皮膚・感覚器・呼吸器・運動機能・精神発達などを医師が総合的に確認します。
問診票で聞かれること
健診の発達確認は、当日その場での様子だけでなく、事前に記入する問診票の回答と合わせて判断されます。国が示している健診票の項目例には、次のような質問が並びます。
- ひとり歩きをしたのはいつですか。
- 手をひかれて階段を上がることができますか。
- ママ、ブーブーなど意味のあることばをいくつか話しますか。
- 大人の言う簡単な言葉が分かりますか。(おいで・ねんね・ちょうだいなど)
- 絵本を見て知っているものをさしますか。
- 何かに興味を持った時に、指さしで伝えようとしますか。
- 部屋の離れたところにあるおもちゃを指すと、その方向をみますか。
- 周りの人の身振りや手振りをまねしますか。
- 周囲の人や他の子どもたちに関心を示しますか。
- 自分でコップを持って水を飲めますか。/スプーンを使って食事ができますか。
問診票はお子さんの普段の姿を伝えられる唯一の資料です。「できる/できない」で迷う項目は、余白に「家では絵本の犬を指さすが、初めての場所ではしない」など具体的な様子を書き添えておくと、当日の相談がぐっと深まります。
参照元:厚生労働省「健康診査票(通知)や母子健康手帳(省令)に基づく項目を一覧にした例示」【PDF】(2026年9月調査時点)(https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/001028426.pdf)
発達面のチェック|積み木・指さし・ことばは何をみている?
1歳半健診でよく知られているのが、積み木と指さしの課題です。国立成育医療研究センターが公開している乳幼児健康診査の身体診察マニュアルでは、1歳6か月児健診の判定の目安として次のような基準が示されています。
- 手の使い方の未熟さ:2個の積み木が積めない
- 発語の遅れ:有意味語が2つ以下
- 指示理解の遅れ:絵や身体部位の指さしができない
- 歩行の遅れ:未歩行
- そのほかの観察点:名前を呼んでも視線が合わない/親の膝の上でもじっとせず再々降りようとする
参照元:国立成育医療研究センター「改訂版乳幼児健康診査 身体診察マニュアル」【PDF】(2026年9月調査時点)(https://www.ncchd.go.jp/center/activity/kokoro_jigyo/shinsatsu_manual.pdf)
これは医師が健診の場で気になるサインを見落とさないための目安であり、当てはまったからといって発達障害と決まるものではありません。それぞれが何をみているのかを知っておきましょう。
積み木でみているもの
積み木を2〜3個積む課題では、指先の細かな動き(微細運動)と、目と手の協応が育ってきているかを確認します。同時に「積んでみて」という声かけが伝わるか、大人がやってみせた動きをまねできるかという、ことばの理解と模倣の力も一緒に見ています。
指さしでみているもの
指さしは、単に指を向ける動作ではなく「見つけたものを人に伝えたい」という気持ちの表れです。絵本の犬を指さすことができれば、ことばと物のイメージが結びついていることがわかります。
発達の観点でとくに大切なのは、大人と気持ちを共有するための指さしです。自分の興味を指さしで伝える、大人が指さした方向を目で追う、初めての場面で親の顔を見て確認する(社会的参照)といったやりとりは、社会性の発達をみる重要なポイントとされています。
参照元:国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「健診での気づき」(2026年9月調査時点)(https://www.rehab.go.jp/ddis/aware/baby/check/)
ことば・呼名反応でみているもの
「ママ」「ブーブー」など意味のあることばがいくつ出ているかに加えて、話す力より先に「わかる力」が育っているかを確認します。「ちょうだい」で物を渡せる、「ねんね」で布団に向かうといった反応があれば、ことばの土台は育っています。名前を呼ばれて振り向くか(呼名反応)も、聞こえとやりとりの両面から見られています。
1歳半健診で「発達障害かどうか」が決まるわけではない
1歳6か月児健診では、自閉スペクトラム症(ASD)の一次スクリーニングとしてM-CHATという質問紙を活用している自治体もあります。M-CHATは1歳台の幼児を対象とした23項目の保護者記入式の質問紙で、共同注意や模倣に関する項目が含まれます。
ただし、開発・普及に携わる研究機関自身が「早期発見の質問紙をふくむスクリーニングは、単独で自閉症スペクトラム児を発見するための道具ではありません」と明記しています。健診は診断の場ではなく、気になる点を早めに共有するための入口だと考えてください。
参照元:発達障害情報のポータルサイト「アセスメントツール(M-CHAT)について」(2026年9月調査時点)(https://hattatsu.go.jp/topics/m-chat/)
その場でできなかったときの伝え方
知らない場所、白衣の大人、たくさんの人と泣き声。1歳半のお子さんにとって健診会場は緊張しやすい環境で、家ではできることができないのはとてもよくあることです。
大切なのは、できなかったまま終わらせずに「家ではどうしているか」を必ず伝えることです。
- 「家では積み木を3個積めます」「絵本のわんわんは指さします」と具体的に伝える
- できている様子を1〜2本の短い動画で撮っておき、必要なときに見せる
- 逆に、家庭で気になっていることもメモにして持参する(呼んでも振り向かないことがある、同じ動きを繰り返す、音や感触をとても嫌がるなど)
健診はその場の様子だけで判断されるものではありません。保護者様からの情報が加わることで、判断の精度は大きく上がります。
健診の結果と、そのあとの流れ
「経過観察」「精密健康診査」の意味
健診の結果は、異常が認められない場合のほかに、もう少し様子を見ながら確認していく「経過観察(要観察)」、より詳しく調べる必要があると判断された場合の「精密健康診査」に分かれます。精密健康診査は、一般健康診査の結果、心身の発達異常や疾病等の疑いがあると認められた場合に、適切な医療機関に委託して行われる仕組みです。
参照元:厚生労働省「乳幼児に対する健康診査の実施について」(2026年9月調査時点)(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta9663&dataType=1&pageNo=1)
「様子を見ましょう」と言われると、判断を先送りされたように感じてしまうかもしれません。けれども1歳半の時期は伸び方の幅が大きいため、この時点で断定するのではなく、変化を専門職と一緒に追っていくという意味合いです。
ここで押さえておきたいのは、「経過観察」は「何もしないで待つ」ことではないという点です。多くの自治体では、数か月後のフォロー健診や親子教室、発達相談といった次の機会が用意されています。さらに、経過観察の段階でも発達支援の相談や見学を始めることはできます。気になることがあるうちに動き出しておくほうが、お子さんに合った関わり方を早く見つけられます。
相談できる窓口
健診の場で聞ききれなかったことは、あとから相談することもできます。
- 保健センター・こども家庭センター(担当保健師への継続相談、地域の教室紹介)
- 市区町村の発達相談窓口・子ども家庭支援の担当課
- 児童発達支援センター・療育センター(発達検査、発達支援の相談)
- 小児科・耳鼻科(聞こえの確認、身体面の評価)
- 発達障害者支援センター(地域の支援機関の情報提供)
診断の有無にかかわらず、気になったときに相談先を持っておけることが、その後の見通しをぐっと明るくしてくれます。「困っていることがある」という時点で、相談してよいのです。
早めの発達支援という選択
1歳半で発達が気になった場合、診断を待たずに児童発達支援を利用できるケースもあります。児童発達支援は未就学のお子さんが通う福祉サービスで、遊びを通してことばやコミュニケーション、身体の使い方を伸ばしていきます。利用には市区町村が交付する「通所受給者証」が必要で、申請には医師の意見書等が求められることが一般的です。
1歳半という早い時期に関わりのヒントを得られることは、お子さんにとってもご家庭にとっても大きな支えになります。まずは見学や相談から始めてみましょう。
健診までに家庭でできること
健診に向けて特別な練習は必要ありません。まずは日常のやりとりを少し意識してみましょう。
- 実況中継の声かけ:「わんわんいたね」「くつ、はこうね」と、目にしたものや動作を短いことばにして返す
- 指さしのやりとり:絵本で「わんわんどこ?」と一緒に探し、指さしたら「そう、わんわんだね」と受け止める
- まねっこ遊び:バイバイ、パチパチ、いただきますなど、まねしやすい動作を毎日の場面に添える
- できていることの記録:新しく出たことば、できるようになった動作を母子健康手帳や育児アプリにメモしておく
記録は健診当日の資料としても役立ちますし、「1か月前よりできることが増えている」と気づけること自体が、保護者様の安心につながります。
なお、こうした家庭での関わりと、専門家による発達支援はどちらか一方を選ぶものではありません。「家では何をどう働きかければよいのか分からない」と感じたときこそ、発達支援の専門職に関わり方のヒントをもらえる場面です。家庭での積み重ねに専門的な視点が加わることで、お子さんの伸びやすいポイントが見えてきます。
よくある質問
Q:ことばがまだ出ていません。1歳半健診で必ず引っかかりますか?
A:有意味語の数は目安のひとつで、ことばの理解や指さし、視線のやりとりなど複数の面から総合的に見られます。ことばの理解が育っていれば、その後に発語が伸びていくお子さんもたくさんいます。気になる場合は、家庭での様子を伝えたうえで、相談先を確保しておくと安心です。
Q:会場で泣き続けてしまい、課題ができませんでした。
A:よくあることです。家庭での様子を伝えたうえで、聞ききれなかったことは後日の相談で確認しましょう。会場で判断がつかなかった場合こそ、あらためて相談の場を持つ価値があります。
Q:健診を受けられる期間を過ぎてしまいました。
A:「満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児」が対象ですが、対応は自治体ごとに異なります。まずは保健センターに連絡して相談しましょう。
Q:1歳半健診で発達障害の診断はつきますか?
A:健診はスクリーニングの場であり、診断が行われる場ではありません。必要と判断された場合に、医療機関での精密健康診査や発達検査へとつながっていきます。
Q:指摘されたら、療育に通うことになりますか?
A:親子教室や発達相談、児童発達支援など、段階に応じた選択肢があります。児童発達支援は「診断がついた子だけが通う場所」ではなく、ことばや関わり方に心配があるお子さんが、遊びを通して得意を伸ばしていく場です。まずは見学して雰囲気を知るところから始められますので、担当の保健師と相談しながら選んでいきましょう。
まとめ
1歳半健診は、身体の発育、歯や口の状態、そしてことばと社会性の育ちを、地域の専門職がまとめて確認してくれる貴重な機会です。積み木や指さしの課題も、できるかどうかを試験するためではなく、お子さんの育ちの現在地を一緒に確かめるために行われています。
「様子を見ましょう」と言われた場合も、それは終わりではなく次の相談への入口です。気になることをメモにして持参し、当日聞ききれなかったことは保健センターや発達支援の窓口へ。早く相談することは、早く安心を得ることでもあります。お子さんのペースを大切にしながら、頼れる場所を一つずつ増やしていきましょう。

